交通機関
朝熊登山鉄道史料
昭和12・13(1937・1938)年の朝熊登山鉄道に関する史料を紹介します。朝熊登山鉄道は大正14(1925)年8月に竣工し、同月26日に営業を開始しました。楠部から平岩の平坦線と平岩から朝熊の鋼索線の2線を運営していました。伊勢市内の市電を運営していました三重合同電気とは持ちつ持たれつの関係で、朝熊登山鉄道は昭和3(1928)年11月1日に三重合同電気株式会社に合併されました。同社は、昭和5(1930年2月に合同電気株式会社に名称が変更され、昭和12(1937)年3月、合同電気株式会社は中京地区に基盤を置く東邦電力の傘下に入りました。ここに紹介する史料は全て東邦電力時代のものです。すべて罫紙の表面のみに和文タイプで印字されています。原寸は概ね長辺27㎝×短辺19.3㎝です。
昭和12年6月8日起案 特殊割引乗車券発売認可申請書
夏季の二見浦海水浴及び朝熊山の林間学校を行う学校の生徒を対象とした割引乗車券の発売認可申請書です。東邦電力山田電車のパンフレット(本HP「東邦電力山田電車」で紹介)によると、内宮~二見間往復大人48銭、同区間の尋常小学生団体割引が17銭となっています。この申請書では、前者が32銭後者が15銭となっており、普段より割引率が高くなっており、夏季の団体利用客の増加に大きな期待をしていたと考えられます。
こちらをクリックするとPDFファイルが開きます。
昭和12年12月11日起案 (津支店)軌道主任技術者変更届
こちらをクリックするとPDFファイルが開きます。
昭和12年12月11日起案 地方鉄道主任技術者変更届
主任技術者の変更の申請書です。先に紹介したものと人物名が同じですので、軌道主任技術者・地方鉄道主任技術者は兼任をしていたようで'す。なお、履歴書の内容は同じで、東邦電力のものでない罫紙の両面タイプがされています。
こちらをクリックするとPDFファイルが開きます。
昭和12年12月14日起案 灯火管制に関する調書届
昭和12年12月20日から30日に行われた中部地方防空演習に伴う灯火管制に関する調査報告書です。「3灯火管制に因る減収状況調べ」に「軌道線」と「鉄道線」の記述があります。前者が市内電車線で、後者が楠部から平岩までの平坦線も含む朝熊登山鉄道です。
こちらをクリックするとPDFファイルが開きます。
昭和13年3月17日起案 朝熊鉄道監査事項整理答申書
昭和13(1938)年1月11日付監査通牒に対する答申書です。
1、全線にわたる曲線箇所の拡度の整正
2、朝熊岳停車場・社外建物の新設
3、朝熊ケーブル離合箇所付近の法面の補強
4、専任主任技術者の常設
5、電車の尾灯の完備
6、「チップレバー」の位置の改修
こちらをクリックするとPDFファイルが開きます。
昭和13年3月17日起案 鉄道線停車場数に関する件
朝熊登山鉄道は、楠部駅が起点で、五十鈴川・一宇田・朝熊、平岩・朝熊岳の駅がありました。停車場数が6カ所となっているので、「鉄道線」とは「朝熊登山鉄道」を指すと考えられます。
こちらをクリックするとPDFファイルが開きます。
昭和13年6月24日起案 鉄道線停車場数に関する件
5月1日からの夏季の割引運賃の申請書です。団体だけでなく個人客に対しても割引をしていたことが分かります。本文に「昨年同様」とありますので、毎年申請がなされていたと考えられます。
こちらをクリックするとPDFファイルが開きます。
昭和13年7月11日起案 列車運転度数変更届
7月1日から2日に行われる防空訓練に伴う灯火管制により運休する電車の申請書です。
こちらをクリックするとPDFファイルが開きます。
昭和13年7月15日起案 朝熊鋼索鉄道運転警報器設置届
上で紹介した、昭和13年3月17日起案 朝熊鉄道監査事項整理答申書の第6項目「チップレバーの位置の改修」に関する報告書です。
こちらをクリックするとPDFファイルが開きます。
最後の「鋼索車運転位置表示板」の図は長辺26.6㎝×短辺19.6㎝です。
昭和13年7月18日起案 山田軌道及び鉄道線 灯火管制に関する調査届
7月1日から2日に行われた防空訓練に伴う灯火管制に関する調査報告書です。
こちらをクリックするとPDFファイルが開きます。
〔参考文献〕
伊勢市教育委員会『岳のケーブルカー~朝熊登山鉄道展~』
平成10年2月 伊勢市郷土資料館
山崎寛「失われた鉄道・軌道を訪ねて〔51〕朝熊登山鉄道」
『鉄道ピクトリアル 421』昭和58年9月1日 株式会社電気車研究会
p.63~69
©2020 sadanai