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新農業博覧会

 「新農業博覧会」は大正14年3月21日から5月10日に開催されました。この博覧会は、農村の発展のため、農業の電化・機械化を目指し、新技術を紹介する目的で行われました。(『伊勢新聞』大正14年3月22日 新農業博覧会会長 道家齋「新農業博覧会開催の趣旨について」)主催は農事電化協会・後援は帝国農会・電気協会です。(『新農業博覧会絵葉書』たとう〔筆者所蔵〕)
 博覧会の展示品には、まず、脱穀機・石油発動機・精米器・籾摺機といった実用新案特許を得た農器具類がありました。また、農事電化協会が出品した、発電所・灌漑用水の配置・電動機による脱穀の様子・電化発芽室の模型、その他に、育雛用電熱假母機(孵化した雛鳥を保温する機械)もありました。さらに、勢田川上流では揚水ポンプの動作実験も行われました。そして、飲食店の営業や伊勢の物産販売も行われました。昼間は噴水を五色に、夜間は会場を赤く照らしました。
 また、神都三遊郭の芸妓4人によって「吉野夫人」「豊年踊り」「蜃気楼」の参種類の踊りも披露されました。(『伊勢新聞』大正14年3月21日)
 さらに、山田駅(現伊勢市駅)から会場まで、装飾が施されました。紅白塗りの経木にモールを施したものでした。(「新農業博覧会絵葉書2」の1枚目)しかし、開会までに飾り付けを完了することができなかったようです。(『伊勢新聞』大正14年3月25日)

左 新農業博覧会配置図         
右 宇治山市近傍(左図に方向をあわせる)

『新農業博覧会絵葉書』たとう(袋)に印刷されている会場案内図(左図)です。図の下の道には市電の線路が描かれており、御幸通の沿線だと考えられます。また、図の左上から右端にかけて見られる矢印の書かれている部分は、道路ではなく川とその支流だと思われます。
 また、博覧会正門の入場門(「新農業博覧会絵葉書1」の1枚目)左側の塔の上方奥には、尾上町の五二会ホテルが写っています。よって、会場は、右図の塗りつぶした位置だと比定されます。(伊勢市教育委員会『地図で見る伊勢のあゆみ』〔昭和61年9月〕所収 昭和5年大日本帝国陸地測量部発行「宇治山田近傍」)現在の第三銀行の東側から、簀子橋までの一帯です。
        
新農業博覧会絵葉書1 
左 たとう表  右 たとう裏 (原寸 縦18.1㎝×横21.2㎝)


絵葉書原寸:縦9㎝×横14.1㎝
左:正門(其一) 
中:本館入口と噴水(其二) 

右:右上 会場全景(其三)  左下 演芸館 (其四)

左:右上 名古屋新聞特設温室外観(其五)
  左下 名古屋新聞特設温室内部(其六) 
右:本館入口と噴水(其二) 5月10日(最終日の)のスタンプ


 日付なしのたとう入り・日付ありのたとう入り・バラの3種類を所蔵しています。これらから、少なくとも4枚以上で構成されていたと考えられます。印刷者は不明です。


新農業博覧会絵葉書2 たとう (原寸 縦14.1㎝×横10㎝)

    
絵葉書原寸:縦9.1㎝×横14.1㎝
左:駅前通りの光景   中:全景   右:正門 


 
左:本館   中:噴水付近   右:演芸館


 たとうにもあるように、印刷者は絵画研究会です。演芸館写真中央の看板には、右から「日本ガータ大怪力実演」「少女歌舞劇」「大魔奇術」「○○大曲芸」「活動大写真」とあります。

平成21年10月11日の新農業博覧会会場周辺の様子
宇治山田駅ホームより

左:絵葉書1正門付近?   右:絵葉書2全景?  

※本稿は、皇學館大学史料編纂所所報『史料』第223・224号に掲載したものを再編集・加筆しました。
※本稿の作成にあたりましては、皇學館大学教授(当時・現名誉教授)の岡田登先生、伊勢市史編さん係(平成21年)の皆様に、ご教示・ご協力を頂きました。厚く御礼申し上げます。

〔参考文献〕
伊勢市教育委員会『地図で見る伊勢のあゆみ』 昭和61年9月所収 
        昭和5年大日本帝国陸地測量部発行「宇治山田近傍」
『伊勢新聞』
  
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