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日本赤十字社三重支部 山田病院 (楠部)

 日赤山田病院照寺は当初、現伊勢市営テニスコートの場所に建設されました。
 『伊勢市史 第四巻 近代編』によると、明治31年に日清戦争に呼応する形で、看護婦養成所開設とともにその実習病院施設を宇治山田町に建設する計画持ち上がった。しかし、日本赤十字社は時期尚早として看護婦養成所のみの設立を認可した。病院は宇治山田町が単独で設置することになり、明治34年3月に宇治山田町立病院・日本赤十字社三重支部看護婦養成所の開院式が行われた、明治36年に日本赤十字社では地方病院の設立準則が定められたことにより、地方での病院設立が承認されるようになった。そこで宇治山田町は病院を日本赤十字社に寄付をし、明治37年2月より日本赤十字社三重支部山田病院となったとあります。  


日本赤十字社三重支部落成記念絵葉書
楠部町I様所蔵資料

左:たとう 原寸縦㎝×横㎝
右:総裁宮・三重支部・山田病院
 スタンプには「日本赤十字社三重支部落成記念」とあります。また絵葉書左下から右上に向かって描かれている赤十字のマークの帯の所には、エンボスでやはり「日本赤十字社三重支部落成記念」の文字があります。なお、表面には「日本赤十字社三重支部発行 日本葉書倶楽部謹製」とあります。右上には山田病院の正門付近の写真があります。


日本赤十字社三重支部山田病院正門
原寸縦9.1㎝×横14㎝

 正門奥の建物が本館です。これれは、神久4にある曹洞宗の「自性軒」というお寺に移築されています。

自性軒 

平成21年12月31日撮影
左:山門  中・右:本堂


 正門写真と比較すると、玄関とともに建物自体も間口を狭くして移築したのではないか考えられます。


日本赤十字社三重支部山田病院一覧』
 これは明治44(1911)年9月5日に山田病院が発行した冊子です。病院の住所は三重県度会郡四郷村大字楠部89番地となっています。42ページからなり、内容は、組織・沿革・位置・建造物・設備・優遇・救療・来院病客案内・入院病客案内・入院病客注意、往診案内・職員・看護婦養成規則の13項目です。巻頭の写真を紹介します。

左:表紙 原寸縦18.8㎝×横12.7㎝ 
中:朝日山より写したる病院全景
右:教場(看護婦養成所です2階建てで、1階は患者の病室、2階が教場でした)

左:担架運動・歩行教練  中:病室  右:エッキス光線室

左:調剤室・内科診療室  中:外科診療室  右:婦人科診療室


伊勢市営テニスコート周辺
平成26年1月11日撮影
 写真中央、水色の部分がテニスコートです。その上が修道小学校です。

『日本赤十字社三重支部山田病院一覧』より、「来院病客案内」の一部を紹介します。
診療科目  内科・外科・婦人科・耳鼻咽喉科
診察時間  午前9時~午後12時
休業日   日曜・大祝祭日(祝日のことでしょうか)
        皇后陛下御誕辰(5月28日)・
        病院設立記念日(2月1日)
        年末(12月29日~)・歳初(~1月3日)
受診料   初診20銭、その後60日間無料、  
        60日を過ぎると20銭徴収。
        赤十字社社員・宇治山田市在住者は無料
        度会郡在住者は半額
        診察のみ3銭以上
        身体諸検査 50銭以上
        診断書1回 30銭以上
        処方箋料 1円20銭以上
薬価     内服薬1日分 20銭以上
        頓服薬1回分 5銭以上
        外用薬1剤分 5銭以上
        手術料1回   50銭以上
        局部処置1回 6銭以上

参考:明治末から大正の物価 『値段史年表』による
 胃散       明治31年~  30銭
 メンソレータム  大正9年    25銭(小缶12g)
 米        大正元年    1円78銭(10キロ)
 ガソリン     大正11年   39銭 (1リットル)
 サイダー     大正3年    12銭 


 本稿は『皇學館大学史料編纂所所報 史料』第244・245号(平成24年6月・9月)に掲載した内容をまとめたものです。

〔参考文献〕
日本赤十字社三重支部山田病院『日本赤十字社三重支部山田病院一覧』 
         明治44年9月 日本赤十字社三重支部山田病院 
朝日新聞社 『値段史年表 明治・大正・昭和 週刊朝日』
                  昭和63年6月 朝日新聞社
伊勢志摩の歴史刊行会編 『伊勢・志摩の歴史 下巻』 平成4年8月
                   郷土出版社  p.41
伊勢市 『伊勢市史 第四巻 近代編』平成24年6月 伊勢市  
                          p.443~444


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