宮川～外宮界隈　旅館

大勢館

　外宮前岡本町の宇仁館の隣に本店があった大勢館です。

左：大勢館　絵図　　原寸：縦53㎝×横37㎝　
右：大勢館　絵葉書　原寸：縦9㎝×横14.2㎝　印刷社不明

　左写真と右絵図の左下前の建物は同じものです。ただし門の表札が写真と絵図と異なります。写真右側は「陸海軍御用旅館」左側は「帝国鉄道○○○○○」とあります。
　明治４４（１９１１）年発行の『旅館要録　明治４４年後期』には、「宿料一円以上　外宮　大勢館」とあります。また大正元（１９１２）年・同３年発行の『宇治山田商工名人録』には「岡本町」の項に「大勢館　長二一二　辻岡直一」とあります。
　大正３（１９１４）年発行の『商工名鑑』には「★御旅館大勢館　本店　伊勢山田市外宮前　長電話二一二番　伊勢ホテル　支店　伊勢山田市停車場前　長電話三三二番　支店　伊勢二見ケ浦海濱　日陽ホテル水族館　長電話八番」とあります。しかし、同じく大正３年発行の『宇治山田商工名人録』には明治４５年と同様「岡本町」の項に大勢館の記載がありますが、本町や豊川町の項には見られません。
　明治３９年発行の『伊勢参宮案内』の宇仁館の項に「この（筆者注岡本町の宇仁館）傍に三田屋といふがある」とあります。（丸六大夫さん『ブラお伊勢』のご教示により、『伊勢参宮案内』を参照しました。）
　右絵図には、「弊館義全国御便利ヲ図リ左ノ（？）所ヘ新築致シ宿泊業相営ミ候」「元と三田屋」とあります。以上のことから、大勢館は、当初山田駅前にありまたが明治３９年から明治４４年の間に外宮前岡本町の宇仁館の隣に新築移転してそれを本店とし、山田駅前の建物を支店にしたのではないかと考えられます。
　なお、昭和６年の『宇治山田商工案内』には大勢館の記載はありません。


〔参考文献〕
坂本廣太郎『伊勢参宮案内』明治３９年　公益社　　p.141
東京人事興信所『旅館要録　明治４４年後期』　明治４４年
　　　　　　　　　　　　　　　度会郡宇治山田市　p.10
神都興信所『宇治山田商工人名録』　大正元年　（明治４５年７月現在)　p.18
実業興信所『宇治山田商工人名録』　大正３年 p.9
宇治山田商工会議所『宇治山田商工案内』　昭和６年　p.15～p.19
秋田耕司　『復刻　明治４１年版宇治山田市電話番号簿』　令和２年４月　ＮＦＣ技研

〔参考ブログ〕
『ブラお伊勢』
「二見浦・日陽ホテル大勢館跡 のちの伊勢屋本店　外宮前・伊勢ホテル大勢館跡　宇仁館隣り」
令和２年１２月１３日閲覧

©2020 sadanai